司書のオススメ

掲載日 2021-10-28 00:00:00
タイトル 旅が好きだ!
21人が見つけた新たな世界への扉
著者 河出書房新社/編 
著者 角田光代/[ほか]著
出版者 河出書房新社
資料の種類
メッセージ全文 『旅が好きだ! 21人が見つけた新たな世界への扉』
河出書房新社/編 角田光代/[ほか]著
河出書房新社

★☆★「いつか出かけるその日のために」★☆★


 長引くコロナ禍で気軽な外出もためらいがちになる今、抑えられれば抑えられるほど、あー、どこかに行きたい~!!っていう気持ちになりますよね。
 きっと世界中の人びとが同じように感じていることでしょう。
 そんなガマンの日々を、行ってみたい風景を心の中に思い描く、旅の準備期間にしませんか?

 この本では21人の旅の達人たちが、様々な視点と切り口から旅の魅力やエピソード、旅への想いを綴っています。
 彼らが訪れたのは、国内の温泉から海外の奥地まで。ひとり旅、友人との旅、大好きなものを追い求めての旅、旅を職業としているプロの旅…まさに21通りの旅模様です。なかには、展示する作品を美術館に送り届ける「美術品の添乗員」としての学芸員の旅などというのもあり、目からウロコでした。
 印象に残ったのは、インドの旅の話。現地の人に騙されまくり、辛すぎる料理のせいでお腹をこわし、挙句の果てはパスポート、お金、帰りの飛行機のチケットが入った貴重品袋を丸ごと盗まれるという顔面蒼白な事態。彼はそこから日本領事館、警察、銀行、航空会社を訪ね、帰国するためにひたすら交渉を重ねます。そのうちにトラブルを説明するために必死にしゃべり続けていた英語はどんどん上達し、居候先のインド人たちの親切心に触れ、彼の中の何かが変わっていきます。
 結果的にこの最悪の旅は、自らの進むべき道を決定づけた始まりとなったのでした。
 旅をしていれば想定外のことが起こります。それをいかに受け入れ、もがき、乗り切り、そして楽しむか…何だか生きることそのもののように思えます。旅に出る理由は人それぞれでも、共通するのは「今ここ」から抜け出して非日常を体験したいから。
 知らない世界に出会うことによって、未知の自分を見つけたいからなのでしょう。

 歴史上の旅人たちの地図を見続けないと理解できないような行程や、ほっこり癒される漫画エッセイなども盛り込んだ構成は、たまらなく旅ごころをくすぐります。でも今は、色々な本を読みながら想像の旅をすることにしましょう。
 早く安全で平和で自由な世の中に戻りますように…。
 そしてこの窮屈な時代が終わったら、さぁ、旅に出よう!


(宮城野図書館 しまうま)