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掲載日 2020-01-29 00:00:00
タイトル 酒天童子
著者 竹下文子
著者 平沢下戸/絵
出版者 偕成社
資料の種類
メッセージ全文 ★☆★「鬼退治」★☆★

『酒天童子』

竹下文子/著 平沢下戸/絵 偕成社

 二月のはじめは節分がありますね。「鬼は外、福は内」というかけ声とともに豆をまきます。
 鬼は外、鬼は災い。日本の昔話の悪者といえば鬼です。酒天童子というのも鬼の名前です。

 平安時代に源頼光(みなもとのよりみつ)という人物がいました。彼は武芸に優れた人として語り継がれており、いくつかの伝説が残っています。この本ではその伝説をまとめ、一つの物語にして描いています。
 つわもの頼光が対するのはやはり鬼。いろんな形で鬼が登場しますが、メインは酒天童子との対決。

 都で高貴な姫君が姿を消すことがあいついだ。風が吹いた後、突然消えるのだと。
 陰陽師安倍晴明が占うと、姫君たちは大江山に巣くう酒天童子にとらわれているという。
 鬼であるのか、人であるのか、妖術を使いしもべの鬼を率いる酒天童子とは何者か?
 討伐を命じられた頼光は、叔父の藤原保昌(ふじわらのやすまさ)と、四人の家来たちとともに山伏を装い大江山へ向かう。

 鬼という言葉やイメージがどのように人々のなかに定着したかについてはいろいろ説がありますが、目に見えないもの、未知のもの、自分たちと異なるものへの恐怖が根底にあったようです。

 あとがきで作者は
「頼光たちの時代、実際に地震や台風がたびたび起こり、大火事や疫病で多くの犠牲が出たことが記録に残っています。当時の人にとっては、人間の力ではどうにもならないおそろしい災害も、「化け物」や「鬼」だったかもしれません。」(本文242p)
とのべています。

 鬼退治の物語を読みながら千年の昔に思いをはせてみませんか。

(宮城野図書館 ティーポット)