司書のオススメ

掲載日 2016-05-01 00:00:00
タイトル だれが石を投げたのか?
著者 ミリアム・プレスラー/作
著者 松沢あさか/訳
出版者 さ・え・ら書房
資料の種類
メッセージ全文 「家族のなかで傷つくとき 」

私たちにとって最も身近で深いつながりを持つ家族。でも、一緒に暮らすその家族が、ときにはとてもつらい存在になることがあるのも事実です。この本は、ドイツの作家によって書かれたひとつの家族の物語です。

松葉杖で暮らす15歳の少年トーマスは、ギムナジウム(日本の中高一貫の進学校のようなもの)に通う優秀な生徒です。でも、道で会う人が自分を見てどんな顔をするかを知っているし、お客が来るとママは何か口実を作って自分が部屋から出ないようにしているのにも気づいています。

ある日、弟のフリーダ―が学校から帰ってこない。彼はママにそっくりの美しい顔だちをしていますが、学校の成績は最悪でいつもママを悩ませていました。落第が決定的となったその日から、11歳のフリーダ―は帰らない……。

トーマスは叫びます。「ママはいつでも、自分の子どもが、よその子より上でなければ満足できなかった。自分の子どもを自慢の種にしたがった……」「パパは何もしなかった……」

とてもつらい物語ですが、もし読者の思いと重なるものがあったなら、一人ではないと信じ、自分にとっての一歩を踏み出す勇気をもらえる一冊と思います。

(市民図書館 村上佳子)