司書のオススメ

掲載日 2018-10-30 00:00:00
タイトル もし明日、親が倒れても
仕事を辞めずにすむ方法
著者 川内潤/著
著者
出版者 株式会社ポプラ社
資料の種類
メッセージ全文 ★☆★「もし明日、親が倒れても。あきらめるな、青春!」★☆★

俺は、マオー(魔王)の召使いだ。俺の家は、マオーの城だ。
マオーは体もアタマも弱っていて、寝たきりじゃねーが人の世話が必要な状態だ。
にもかかわらず尊大で悪辣で、人の都合なんか考えやしねェ。
つい先日も、一人で勝手に馬車を呼び出して、俺が気づいた時にはもう乗りこんでた。
予定にないっての! でも、ついてかねーと、奴はどこで倒れるかわかんねー、ときてる。
俺はもう怒り心頭、そこらじゅうに響く声で怒鳴ったね。
「降りろ!!!!」
もちろん奴は聞きゃしない。ニヤニヤ笑ってるばかり。
…ついてったよ、俺。待ってるように馬車に厳命して、やってた作業を中断。大急ぎで着替えて(ボタンかけ違えてた)、さ。
俺、従者以外にも、仕事あんだよな。ずっとやりたかった仕事。
給料は安いけど。けっこーしんどいけど。
ほかにもやりたいこと、しなきゃって思うこと、いろいろある。
でもみんな、あきらめなくちゃいけねーのかな。だってこのマオー、俺の父親なんだよね。

…なんて人はいませんか。これは、現実には家族の介護の問題です。
冒頭のマオーの話は、私の実話です。
要介護の父が、一人でタクシー呼んで、どっか行っちゃったりするわけよ。

今、介護は誰にとっても他人事ではありません。家族の介護をする若い世代を「ヤングケアラー」というそうです。介護をがんばるあまりに、学校をやめたり、進学をあきらめたりする子もいるとか。
この本の著者は、「介護のために仕事を辞める必要はない」といいます。(10代の皆さんならば、仕事を夢や学業、就職と置きかえてもいいでしょう。)ではどうしたらいいのか?
具体的には、他人の手を借りること。全国どこにでもある、地域包括支援センターに相談すること。実例をあげて、その方法をわかりやすく書いてあります。

家族の問題はそれぞれ違っているし、本1冊で何もかも解決するわけじゃない。でもこの本に出会って、私は少し気が楽になりました。
もし介護の問題で悩んでいる人がいたら、一度見てみて下さい。
自分じゃなくても友達に、情報が必要な子がいたら、教えてあげてほしい。道が開けるかもしれませんよ。

(太白図書館 今日もマオーと仕事と格闘中・F山)