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掲載日 2025-10-31 10:00:00
タイトル

村田エフェンディ滞土録

著者 梨木香歩/著
著者 中村智/装丁
出版者 KADOKAWA
資料の種類
メッセージ全文 『村田エフェンディ滞土録』
梨木香歩/著
中村智/装丁
KADOKAWA

★☆★ ディスケ・ガウデーレ! ★☆★

 物語の舞台は1899年、今から約125年前。
 トルコのスタンブールに研究留学した主人公、村田君。
 ギリシャ、ドイツ、イギリス、トルコ、そして日本。様々な国の面子が集まる下宿先は、今日も賑やかだ。
 自国とはあまりにかけはなれた文化に戸惑いつつも親交を深めていく日々に、同宿の友が道端で拾ってきた(かなり)癖の強いオウムが更なる彩りを添える。
 キーパーソン(キーバード?)でもあるこの鳥、ことあるごとに喋る。ことがなくても喋る。時々神経を逆なですることまで、喋る。村田君も仲間たちも翻弄されっぱなしだが、不安定で雑然とした国情の中、オウムの喋りがユーモラスで明るい。
 やがて日本の研究機関から、帰国するよう命令が下った。
 一緒に学び過ごした仲間達は、騒がしいけれど明るさを灯してくれたオウムは、激動のトルコで果たしてどのように生きていくのだろうか。

 冒頭で記した「ディスケ・ガウデーレ」は、オウムが叫んだ一言。ラテン語の格言だ。
 オウムの発言に肩をすくめて笑いながら、村田君とともに悩みながら、意味を知ってもらえたら嬉しい。

 最後にはあなたも、この言葉を呟きたくなっているかもしれない。
 ディスケ・ガウデーレ、と。

(太白図書館 tomo)