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掲載日 2020-07-29 00:00:00
タイトル 『やらなきゃゼロ!
財政破綻した夕張を元気にする全国最年少市長の挑戦』
著者 鈴木直道/著
著者
出版者 岩波ジュニア新書
資料の種類
メッセージ全文 ★☆★「ゼロから始める市長生活」☆★

『やらなきゃゼロ!
財政破綻した夕張を元気にする全国最年少市長の挑戦』
 鈴木直道/著
 岩波ジュニア新書(岩波書店)


 やっと学校が再開して1ヶ月以上経ち、みなさんきっと忙しくしていることでしょう。
 このコロナの騒動の中で、各都道府県の知事たちがよく話題になりましたよね。

 東京都の小池百合子知事、大阪府の吉村洋文知事が特に有名だと思います。

 ではこの本の表紙の若者、だーれだ?
 
 北海道の鈴木直道知事の若かりし頃(今も十分若いけど)です。

 鈴木知事は2020年7月の時点で39歳、47都道府県の中でも最年少の知事です。
 2011年夕張市長に30歳で当選した時も、全国最年少市長として話題になりました。

 若くして市長、道知事になるなんて北海道大好きなんだね、
 地元を愛して地元のために頑張ってるんだね…って思うでしょ?
 ところがどっこいこの鈴木さん埼玉県出身で、夕張市長になる前は東京都の職員(公務員)でした。
 一見、北海道とは縁もゆかりもなさそうなのになぜ…?

 鈴木さんが高校生の頃両親が離婚、生活が苦しくなりましたが、行政の支援を受け、そこで行政サービスのありがたさを知りました。
 その経験がきっかけとなり「自分も公務員になって人の役に立ちたい」と思うようになります。
 そして高校卒業後は、東京都の職員になり、都庁に勤務することになりました。

 公務員になってしばらくした頃、鈴木さんは北海道の夕張市に派遣されました。
 夕張市はその頃財政破綻…多額の借金を抱え、このまま市として行政サービスを続けるのが困難な状態となってしまっていたのです。
 その支援のため、東京都から応援職員を派遣することになったのでした。

 知り合いが誰もいない極寒の地で働く鈴木さん。
 冬は経費削減のため5時を過ぎると市役所の暖房は切られ、室内でもマイナス5度。
 街に明るい話題は何もなく、人口は減っていくばかり…。
 そんな中鈴木さんは地元の人と積極的に交流し、夕張の未来のために何ができるか考えるようになります。
 借金を返すだけではダメ。住人が「ここに住んでいてよかった」と思えるような明るく元気な夕張にしなくては!…しかし志半ばで任期は終わります。

 東京に戻ってしばらくたったある日のこと、夕張派遣時代にできた仲間から連絡が。
 「今度行われる夕張市長の選挙に立候補してほしい」
 それを受けて、ついに鈴木さんは立ち上がるのです!

 しかし、選挙に勝つための後ろ盾もお金も何もない鈴木さん。
 ゼロ、いやマイナスのような状態から選挙活動を始めなければいけませんでした。
 鈴木さんを応援する人は徐々に増えていきましたが、中でも元上司の石原慎太郎東京都知事(当時)の存在が際立ちます。

 選挙に出るため都庁を辞める時のあいさつで
 鈴木さん「夕張市長になります!」
 石原都知事「おまえはとんでもない勘違い野郎だな」
 罵倒…( ;´Д`)

 しかし一転して「いや、何事も勘違いから生まれる(中略)そういうお前を俺は殺しはしない」と、物騒だけどなんかかっこいい台詞(さすが芥川賞作家)で背中を押してあげたり、
 「夕張市民全員(約一万人)に会って、お前の思いを伝えろ」と無茶にしかきこえないアドバイスしたり
(この後鈴木さんはアドバイス通り、4ヶ月で夕張の全世帯95%以上の家庭を訪問するのであった…)
 ほかの候補者が有名な国会議員やタレントの応援演説を受けている中、無所属でどこの党の推薦も受けていないショボーン(´・ω・`)な鈴木さんの前に東京から颯爽と現れて応援演説したりします。
 なにこの師匠ポジション都知事(´ △ ` )
 ほっこりで誠実、丁寧な活動を続け、2011年4月、見事夕張市民の信頼を勝ち取り、市長に当選します。
 そこから夕張市長としてどう活躍したのかは読んでのお楽しみ。
 本の内容は夕張市長時代の途中までですが、現在鈴木さんは夕張市長から北海道知事にジョブチェンジし、舞台を広げて活躍中です。

 政治や行政って、普通に暮らしているとその関わりに実感がもてないかもしれません。
 でも政治家ってすごい!公務員ってこんな仕事もしているんだってわかる1冊です。

 コロナ騒動、まだまだ気が抜けませんし、図書館も一部サービスを制限していますが(7月時点)、皆さんどうぞ健やかにお過ごしくださいね!

(太白図書館 まっきー)